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第19話 英国総選挙2015:水瓶座の天王星

英国旗をデザインした投票箱

英国旗をデザインした投票箱

 実は、私はロンドン・オリンピックとかロイヤル・ウエデイングとか、2年もたつとアウト・オブ・デイトになるようなトピックは、ここでは取り上げたくないのです。年月すぎても変わらず読めるようなイギリスの風景、風習について書きたいのです。
 が、今回2015年の総選挙は手に汗握る白熱戦で、どうしても書きたい思いにかられ書くことにしました。

トースト目玉焼きの英国地図

トースト目玉焼きの英国地図

 政治に暗い私が無知蒙昧を承知で言えば、デビッド・キャメロン率いる「保守党」(Conservative Party)乱暴に言えば「右寄り」と、エド・ミリバンド党首の「労働党」(Labour Party)「左寄り」の対戦。
 そこに、移民急増を危惧してEUからの離脱を掲げる「ユーキップ」(UKIP, UK Independence Party)、スコットランド独立を訴える「スコットランド民族党」(SNP, Scottish Nationalist Party)、そして「自由民主党」(Liberal Democrat Party)を交え、レインボー政権に?とまで言われた今回の総選挙。

キャメロン首相

キャメロン首相

 「貧困層や移民も含め弱者の保護が優先。教育、医療、住宅、賃金の改善を!」と叫ぶ労働党。 対して「これ以上、国家が抱える借金を増やしてはならない。医療教育にも力を注ぐが、まずは安定した国家の基盤を!」と訴えるキャメロン首相。

選挙速報が流れるロンドンの街

選挙速報が流れるロンドンの街

 選挙前の2か月間、テレビでは選挙特集番組がにわかに目立ちます。1週間前になると激戦はピーク。いよいよ5月7日当日、全国で投票が行われる午前7時から午後10時まで、テレビラジオでは選挙報道がピタッと鳴りをひそめ、台風の目のような静かで不気味な一日に。ここで何か言い及ぶと、まだ投票に行っていない浮動票に影響を与えるのでいっせいに自粛するようです。
 そして開票が始まる午後10時から、イギリスの眠らない一夜が始まります。翌朝8時までテレビはノン・ストップで開票速報を放送。

 残念ながら体調を崩し、このところ臥せっていた私は徹夜マラソンままならず。クリスおじさん(夫)とて、寄る年波には勝てません。寝室に退去したものの結果が気になり、まんじりともせずラジオ速報に耳を傾け結局、一睡もできず。私は寝ました。ただ朝6時半にはボサボサの髪でベッドからテレビの前に平行移動して、その後はテレビに釘付け。

 結果はキャメロン首相率いる保守党が議席の過半数を占め、18年ぶりに保守党単独政権が誕生。経済や世界構造に及ぼすその影響は、政治経済評論家にお任せすることにして、今回はテレビ新聞の選挙報道のあり方を見て、私が感じたことをお伝えます。
 そして、この選挙戦を見ていると、第1話「ブライトンとクリスおじさん」でも言い及びました水瓶座の支配星である天王星、ギリシア神話の天空の神ウラノスの精神を強く感じるので、そこに焦点を当てたいと思います。

テレビの選挙答弁番組。ステージに並ぶ各党党首と、会場に集まる市民。

テレビの選挙答弁番組。ステージに並ぶ各党党首と、会場に集まる市民。

 総選挙前の2か月間に渡って数回、テレビで行われた「党首答弁会、質問会」ですね。
不謹慎な言い方ですが、下手なコンサート・ライブより、よっぽど気合が入ります。
会場ステージには各党党首が並び、客席の一般庶民から上がる質問に対して、質疑応答スタイルで進められます。

 私の主観です。それにしてもこの国の政治番組の司会者のお姉さま方は、まあきれいで背が高くて、こわいこと、こわいこと。キャメロン首相の発言をさえぎって「はい、キャメロンさん、そこまで!時間切れ!次は労働党発言!」と仕切っていきます。さらに話そうとするキャメロン首相に「ストーーーーップ!!」と号令をかけます。
 会場からの発言には「発言は挙手してからにしてください!」と振り切り、「いや、今、彼女は大事なことを言ってるから、少しだけ聞いてあげて。」とのキャメロン首相の嘆願にも「静かにーー!次は労働党!!」と手綱をとっていきます。

 クリスおじさんに聞きますと、こういった政治番組の司会者は全体のコントロールを失うと収拾がつかなくなるので、これぐらいのツワモノでないと務まらないそうです。

 そして会場からの発言質問タイムです。キャメロン首相に「経費削減と言うけど、今でも生活できない貧困層がたくさんいるの!これ以上ホームレスがあふれるような国で、自分の子供を育てたいと思う?」と詰め寄る中年女性。

 自民党党首に向かって「大学授業料値下げと言うけど、そのお金を一体どこからひっぱってくるの?」とストレートに尋ねる20才の女の子。答えて予算組みを説明する党首に「それ質問の答えになってないじゃない!何にどれだけ予算を用意するか、聞いてないの!その予算をどうやって捻出するか聞いてるの!」と肩をいからせます。しかし彼女の言うことはもっともです。

 会場のジイチャンからの発言に「あ、僕はあなたの意見には賛成できませんね。」と返すキャメロン首相。「賛成できんて、そら、あんたがまちごうてるわ。」と、しれーっと言い返すジイチャン。会場の忍び笑い。キャメロン首相の苦笑い照れ笑い。私はテレビの前で大笑い。そして大爆笑の私を、けげんな顔で眺めるクリスおじさん。

 それにしてもこうやって見ていますと、政治家と司会者と会場に集まる一般市民。この三者の間に敷居の段差が感じられません。
そこで話は「人道と平等」を謳う水瓶座の天王星に移ります。水瓶座の支配星は「革命星」と言われる天王星。ギリシア神話の天空の神ウラノスです。

天空の神ウラノスの彫像

天空の神ウラノスの彫像

 この天王星が発見されたのは1781年で、フランス革命や電気の発明とほぼ同時期です。
改めておことわりしますが、天王星は1781年に「はじめまして。ボクがウラノスです。」と、人類の前に名乗りを挙げて姿を現したのではありません。太古の昔から宇宙にあり、たまたま人類がその年に見つけ出したのです。そして偶然か必然か、天空の神ウラノスの名を、この天体に与えた。
 つまり人類の中でその時、にわかに活性化した「自由、平等、博愛、人道」の精神を、この天体に込めたわけです。そこで天体と人間の間に共鳴共振作用が生じると、私は考えます。天王星を触発剤として、私達の中で自由平等の精神がムクムクと頭をもたげるのです。

フランス革命、1789年“バステイーユ襲撃”

フランス革命、1789年“バステイーユ襲撃”

 ですからね。水瓶座生まれの人や、ホロスコープの中で天王星が際立っている人は、年功序列の組織に組み込まれたり、サザエさんのようなお茶の間に閉じ込められると、欲求不満でツムジ曲りになってしまいます。水瓶座が目標とするのは「一人一人の自由と独立」ですから。

ロンドン市内のデパートのクリスマス・デイスプレイ

UK総選挙のホロスコープ 2015年5月7日 PM10:00  Westminster

 それから天王星のキーワードによく「仲間、グループ」という言葉がでてきますが、この仲間グループとは、お友達や仲間意識のことではありません。むしろ天王星はダンゴのような癒着状態を嫌います。天王星が求めるのは「地球をより良いプラネットにするためのネットワーク作り」といった意識です。

 そして天王星のメガネを通してみると、世の中には上も下も、主役も脇役も、好きも嫌いもありません。ただ見えるのは、全体としてのあるべき姿だけ。ここがパラドックスなのですが、天王星は「個人の自由を象徴する星」と言われつつも、天王星のレンズを通して見るのは「全体としての理想像」だけなんです。

 ですから天王星に表される集合体の潮流に接触する時は、水瓶座と対角の獅子座支配星、太陽が表す「自我」が育っていないとダメですね。ここが育たないと、自分より大きな何かに簡単に呑み込まれ、集団でとんでもない方向に突っ走ることがあります。この極端な例がテロやファシズムです。
 自分の視点を持って全体像をみすえることも水瓶座の大きなテーマになります。そしてオカシイと思ったら、集団の流れからイチ抜ける醒めた勇気も問われます。

 さらにここが大事ですが、「民主的な言論の自由」と、心ない発言や情報のたれ流しは違いますね。自分なりの倫理観を育てないと、天王星が目指す「言論の自由」は実践されません。
「民主主義の原点となるマグナカルタ(大憲章)がイギリスで制定されたのが1215年。民主主義の精神は百年そこらで育つものではない。失敗と試行錯誤を繰り返し、1千年の年月を経て、まだなおかつ実現へ向かおうとしている。」とクリスおじさんは言います。

キャメロン夫妻、当選の喜び。

キャメロン夫妻、当選の喜び。

 余談になりますが、熱心な保守党支持のクリスおじさんは、保守党勝利でゴキゲンです。その理由は?「労働党の政策は絵に描いたボタモチだ。」そして?「労働党が1960年代に学費無料にしたおかげで、貧しい生い立ちにもかかわらず、大学進学を果たせた40代50代の一部の秀才グループ。今やIT産業に就き、高級車を乗り回し、3階建ての豪邸でシャンペン飲みながら、貧困層と労働党支持の掛け声あげるのは欺瞞以外の何ものでもない。」と憤慨します。

 とうてい書ききれませんが、今回の選挙戦ではいろんなドラマを垣間見た思いです。
一つの理念も角度を変えれば、異なる色合いに見えてくる。

 またお会いしましょう。

★選挙に関する写真はBBCのサイトから引用させて頂きました。
関心おありの方はご覧ください。
www.bbc.co.uk/news/in-pinctures
★ウラノスの彫像と、バステイーユ襲撃の絵画はウイキぺデイアから引用いたしました。