占星学 ユキコ・ハーウッド[Yukiko Harwood] 星の架け橋

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TOURS

第6話 ブライトン・マラソン:牡羊座の火星

ブライトン・マラソン

 今年で3年目をむかえるブライトン・マラソンが4月15日に開催されました。参加者は約1万人。全工程42キロを完走します。子供のときから体育苦手でおよそスポーツなるものと無縁の私は、ブライトン・マラソンがこの目で初めて見る、マラソン光景。


 当日の朝は我が家のむかい、プレストン・パークから1万人がスタート・ラインを切って走り出します。数日前から仮設トイレやステージの建設。この界隈はにわかにものものしく忙しくなります。当日はブライトン周辺の道路は通行止め。

 言うまでもなく、クリスおじさん(私の夫)は、こういうお祭りごとは苦手。「ひたすらうるさいだけだ。」と当日もかたくなにテレビの前に座り、沿道で歓声をあげるような真似はしません。

早朝、ウォーミングアップするランナー

早朝、ウォーミングアップするランナー

 参加者の顔ぶれは多種多様。優勝候補はオリンピック・ランナーのような筋肉隆々たる黒人グループ。やはりアフリカの人達は躍動感がありますね。クリスおじさんに言わせると筋肉の作りが違うんだそうです。ジッとしていられない。走って走って走り抜くように体ができているそうな。

続々集まってくる参加者達、おいおい、クマのぬいぐるみで
42キロ完走する気かよ~

続々集まってくる参加者達、おいおい、クマのぬいぐるみで42キロ完走する気かよ~/いざスタート地点へ

いざスタート地点へ

 マラソン見物初めての私には、日本との比較はできないのですが、総じてリラックスした印象を受けますね。20代30代の体育会系も大勢いる一方、70代のおじいちゃんおばあちゃんも。それからとうてい勝ち目はない、と踏んだ余興組。恐竜やクマの縫いぐるみに身を包んだオジサン達、女装してバレリーナの衣装をまとったお兄ちゃんなどが沿道の観客を楽しませてくれます。身体障害児のわが子を車椅子に乗せたお母さんも、車椅子を押しながら42キロの完走を目指してスタートを切ります。当然、こういう人には大歓声大拍手が上がります。目指すものは人様々。

スタートを待つランナーの国籍、年齢はさまざま

スタートを待つランナーの国籍、年齢はさまざま/犬もたくさん応援見物に来ます

犬もたくさん応援見物に来ます。

 ところで今回は牡羊座とその支配星・火星についてお話したいと思います。火星は男性、金星は女性のシンボル。そんなわけで「火星は男性的エネルギーの象徴」と、教科書にはあります。ところがこの「男性的エネルギー」の定義なるものが単純なようで、つかみにくいところ。いかが思われますか。

 星占いの本を見ますと、「牡羊座の支配星は戦いの星・火星。よって牡羊座の人はリーダーシップにあふれ体力にも恵まれるが、性急でせっかち。」なんて書いてあります。でも実際には病弱な牡羊座もいれば、なかなか自己主張できない牡羊座もいるわけです。単純に言い当てようとすると、なかなか紋切り型にははまらない。一富士、二鷹、三なすびとはいかないところが占星学の醍醐味でもあります。

 まず初めに。牡羊座は黄道12宮の最初の星座であることから考えてみましょう。
「オギャー。」と、人がこの世に生れ落ちた瞬間を想像してください。ある意味サバイバルの始まりです。教育教養、家族愛博愛、こういうのはもっと後にくることであって、本能的に母乳を飲もうとする意欲、これがなければ生きのびることができない。こういったことから、人間が持つ原始的なサバイバル本能を表すとも言えるでしょう。生きようとして一歩前に踏み出す力。もちろん体力勝負でもあります。

 幼稚園の子供が、友達にオモチャを取られてカッとなって相手を叩く。これも発達途上の火星の性質の自然な表れ。大人になった私達はそんなみっともないとこはしませんが、それでも映画館に行くと、座席の上に本やスカーフを置いて場所取りをする。「これは私のものよ。」とマーキングするわけです。

 火星はギリシア神話の戦いの神アレス。人間が持つ闘争本能も火星のエネルギーの表れと言えるでしょう。死ぬか生きるかのバトル、スリルに満ちた体験。人間の中には危険をかいくぐりたいという本能的な欲求があります。あまりに平和で安穏としていると退屈を持て余してしまう。しかしこういったこと、現代社会で合法的に体験するのはなかなか難しいものがある。

 牡羊座の火星が究極に目指すものは、「行動へと一歩踏み出す勇気と、うまくいくあてのないことにチャレンジする精神」です。勝ち負けということで言うと、人に勝つことが目的ではなく、自分で「やった!」と実感がつかめること。これが大事ですね。自分では「やった!」と思っていても、はるかによくできる人もいるわけです。試験でもスポーツでも何でも。この場合、自分の限界を受け入れる、または時の運不運にこだわらない、おおらかさが問われます。ユーモアのセンスも必要でしょう。「人に勝たねば。」と思いつめると、この火星のエネルギーは不健全で歪んだものになってきます。

 ユーモアのセンスということでは、対角の天秤座の金星の要素も大切。黄道12星座は、地球を取り巻くリング状の空間と考えてください。そして牡羊座の真向かい、つまり180度対角に位置するのが天秤座です。美の女神・アフロデイーテを支配星とする天秤座は調和と友好の精神がモットー。牡羊座の火星が常に「僕はこうしたい。」と考えるのに対して、愛されたい天秤座の金星はいつも「あなたはいかが?」と人にたずねます。

仮説トイレに並ぶ行列

仮説トイレに並ぶ行列/午前9時、朝日をあびてスタート!

午前9時、朝日をあびてスタート!

 さっきのマラソンの話に戻ります。仮装ランナー軍団です。「どう考えても結果は目に見えている。負けをくやしいと思わず、肩の力を抜いて楽しもう。そして楽しむなら、周りも喜ばせてやろう。そうだ、バレリーナの衣装を着て参加しよう。」と本人考えたかどうかは知りませんが、情けないと思わず、存分に楽しみ楽しませること。これはアフロデイーテのメガネにかないますね。

通りを行くランナーの群れ

通りを行くランナーの群れ

 ブライトン・マラソンの最後尾はこの仮装軍団が沿道の観客に手を振りながら、拍手喝采行くわけです。クリスおじさんはこれをして「ルナテイック・アサイラム。」(メンタル障害難民収容所)なんて憎まれ口をたたきます。それでも最後尾軍団が我が家の前を通りすぎる時は、テレビの前から腰を上げて、ベランダに立ってまんざらでもなく嬉しそうに眺めています。

最後尾よりはるか後ろ、観客も過ぎ去った所で我が子の車椅子を押しながら走るお母さんランナー。

最後尾よりはるか後ろ、観客も過ぎ去った所で我が子の車椅子を押しながら走るお母さんランナー。

 牡羊座と天秤座に限らず、対角の星座同士は一見正反対の顔を見せながら、同じテーマに取り組むと言われます。つまり両極の性質のバランスをうまく取りながら、一つのものに練り上げ統合していくこと。これが一生のテーマになるわけです。
それがうまくいかないと、牡羊座は、負けん気ゆえに、人を蹴落としても自分が一歩前に出ようとします。あるいは人に勝つ見込みのないことには手を出さない、といった具合。一方、天秤座は人に好かれたい、波風立てたくないばかりに、本当のところ自分が何をしたいのか、わけがわからなくなってしまう。

 こうなると牡羊座は、天秤座の良いところを認めることができず、よく言えば柔和な人に対して「優柔不断で日和見主義。」と腹が立ってきます。天秤座は天秤座で、牡羊座の性質が粗野に見えて、自分の思い通りに行動する人には「自分本意で勝手。」と憤慨してしまいます。互いに自分の内面の葛藤を、他人を写し鏡にして見ているわけです。

 面白いものですね。牡羊座の開拓チャレンジ精神は、天秤座のなごやかさと和の心に支えられる。天秤座の協調性は、牡羊座の一歩前に踏み出す勇気がなければ、意思を持った個人として育っていかない、と言えるでしょう。

 占星学を学ぶということは、天界の神々の性質を通して人生をより深い考えることができる。そして人生の内的な価値を発見することができる。そこに尽きると思いますね。
で、パラドックスなんですが、占星学を深く学ぼうと思えば、その題材は日常、遭遇するものの中にいくらでも潜んでいるのです。

 ということで、今回のお話は幕を閉じます。次回は日本でも報道されたと思います。
エリザベス女王の即位60周年。クーインズ:ジュビリーの様子をお伝えします。
またお会いしましょうね。