占星学 ユキコ・ハーウッド[Yukiko Harwood] 星の架け橋

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TOURS

第3話 ブルーベル鉄道:双子座の水星

 今回はブルーベル鉄道のお話です。英国南端サセックス州は、牧歌的でなだらかな田園風景がどこまでも広がり、私は草むらの牛の糞に足を踏み入れ、靴もズボンもウンコだらけになる。家に帰るまで、はとうてい待てないので、川岸に腰かけて靴とソックスを洗ってビショビショの靴でトボトボ帰る。そんな所です。夏、木漏れ日がすけて大地がキラキラ輝いて見える様子は、シェークスピアの“真夏の夜の夢”の世界。
(但しシェークスピアはサセックスの出身ではありません。)

田園風景

田園風景
車窓から見るサセックスの田園風景

 ブルーベル鉄道はそんな牧草地帯を走る、100年前のヴィンテージ蒸気機関車です。サセックス州のシェフィールド・パーク駅を出発。ボオーーー、ボオーーーと勢いよく煙を立てながら、ゴットンゴットン北へ向かうこと約30分でキングスコート駅に到着。そこで草原の風に吹かれて小休止。再び列車に乗り込みシェフィールド・パーク駅に戻る。全行程1時間半の蒸気機関車の旅です。

蒸気機関車

蒸気機関車
英国サセックス州のブルーベル鉄道はヴィンテージ蒸気機関車です。

 毎回このお話に登場する私の夫、クリスおじさんの話によりますと、この鉄道が開通したのは1880年代。日本でいえば明治の中頃です。地元の貴族の支援により、サセックス州の南から北へと走っていたそうです。ところが思うように収益が上がらず1955年に廃止路線に。その後、鉄道保存協会の働きかけにより一部の区間、観光客を乗せて走るヴィンテージ鉄道として再開。

 また1980年代のサッチャー政権下、赤字財政挽回のための民営化で、失職したパイロットの人たちが、退職金のいくらかをこのブルーベル鉄道に寄付。お金だけでなく、自らも機関車の運転、エンジニアリングなど労力技術面で大きな貢献を果たしたそうです。

 シェフィールド・パーク駅舎は昔のままの面影をとどめ、駅員さんの制服もレトロ。ちなみにこの鉄道で働くおじさん達は機関車マニアのボランテイア。鉄道ファンにとって、このユニフォームを着て蒸気機関車に乗るのは、たまらん魅力があるようです。

ボランティアスタッフ

ボランティアスタッフと駅舎

駅舎
100年前の面影をそのままにとどめるシェフィールドパークの駅舎、駅の職員さんも当時のままの服装、みんなボランティアで働いています。

 クリスおじさんが子供の頃、つまり1940年代末、機関車の運転手になることは男の子にとって究極の夢。来る日も来る日も線路脇に腰かけて友達と一緒に機関車の絵を描いてすごしたといいます。

石炭

石炭と乗車する人たち

乗車
昔ながらに石炭をくべて、蒸気で走ります。鉄道ファンにはたまらない、観光客は年中絶えることはありません。

 この蒸気機関車、全て名前がつけられていますが、単なる金属の破片ではない、有機的な生きものであることを実感させてくれます。煙を立ててゆっくりとホームに滑りこんでくる、その姿はそうそうたる威厳に満ちて、感情過多の私はここでも涙がこぼれそう。

車掌
まるで映画の中から出てきたような風格を持つ車掌さん。

車掌と車内

車内
乗客の切符をチェックするボランティアの車掌さん、車内はサンドイッチやビスケットを広げてピクニック状態。

 そう言えば“機関車トーマス”のお話がありますね。このお話もイギリス生まれで、トーマスは実在の機関車。シェフィールド・パーク駅のみやげもの屋には、トーマス・シリーズのオモチャの汽車がたくさん並んでいます。

 機関車トーマスには、同じく機関車のゴードン、パーシーなどおおぜいの友達がいます。

 クリスおじさんに言わせると「機関車がそれぞれの個性を持ち人間のように話す。これは作者一人の空想ではない。当時、みんなが蒸気機関車に対して抱いていた気持ちだ。」と。

シェルフィールドパーク

シェルフィールドパーク

シェルフィールドパーク

シェルフィールド駅向かいのシェルフィールドパーク。元貴族の私有地で、現在は公共の公園です。

 ところで巷の星占いの本を見ると「双子座のキーワード:運搬、通信、伝達、小旅行、兄弟、友達、初等教育。よって双子座の人は、頭の回転が速く弁舌が立ち、好奇心旺盛で移り気。」なんて書いてあります。このキーワードの羅列ですが、「運搬と友達」のどこに関係があるのか、はたして言葉の洪水の出所はどこなのだ、とえてして混乱しがち。

 その上射手座のところをのぞいてみると「哲学、高等教育、深遠な学問ウンヌン」なんて書いてあるので、双子座としては、みくびられたようでいい気はしません。が、決してそんなことはないですよ。というわけで、今回は双子座の支配星である水星の働きについて考えてみましょう。

 水星・ギリシア神話のヘルメス(ローマ神話ではマーキュリー)は、神のメッセンジャーで年をとらない永遠の少年の姿で描かれたといいます。そして旅、商いの守り神であるとも言われます。古来、陸路海路を使って行われた商いは、旅と密接なつながりがあり、言うまでもなく旅に情報はつきもの。そして辻あきないといった言葉からうかがえるように、二つの異なるものが出合うジャンクションの象徴でもあり。ひいては出会いにより生まれる第三の新たな視点を示唆、とも考えられますね。

 さらに12星座は火地風水の4つのエレメントに分かれますが、この双子座は風の星座。ここで風は音を運ぶことに注目。人の声、つまり人の考えを運びます。そして風の星座は双子、天秤、水瓶と三つありますが、双子座はその中で一番初め。つまりマインドの働きの第一歩を司るわけです。

 以上述べたことを一度解体して、それからプラモデルを作るように自分なりに組み立てると、双子座・水星の全体像が見えてきますね。

 「見たい、知りたい、考えたい。」というのはマインドの初歩的な欲求で、人生観を構築する上で欠かせないステップ。「見聞き、よく知る。」ためには、まずいろんな所に足を運ぶこと。そして見たもの感じたことを、兄弟、友達とトウトウと話し合う。そして「イヤそれは間違っているだろう。」などと言い合って自分の観点を練り上げていくものです。

 「お父さんが言いました。」では独自の人生観は育たないのですね。失敗してケンカして挫折して、その中から自分で見つけていくもの。双子座のキーワードに「兄弟、友達」はでてきても「親」がでてこないのは、このためです。

 こうしてみると、機関車トーマスの双子座・水星的な世界がうかがえますね。半世紀以上前、男の子が集まって機関車に託した夢、これも双子座・水星、マインドの成長段階の表れ。さらに観光客を乗せてわずか30分、サセックスの草原の馬や羊を見せてくれるブルーベル鉄道も水星の役割を担うと言えるかもしれません。小旅行をして「ああ、いい気分転換になった。」とよく言いますでしょう。これも双子座・水星メンタル活性剤の働きです。子供だけではない、大人にとっても大切な要素です。

 前回、金星のところで「喜び愛情を受け取るには、弾みある心が必要。」と書きましたがハートだけではない、マインドも弾みがないと硬くなって萎縮してしまいます。すると新たな発想が出てこない。考えは環状線の如く堂々巡りをするばかり。物事の価値や新たな可能性は、視点を変えてみない限り、一方方向から眺めているだけでは実際のところ見えてきません。

 あちこち足を運び、出来うる限りの情報を拾い集め、いろいろな観点からものごとを見る練習をする。そして取捨選択。世間が言うところの値打ちではなく、自分なりの価値観を練り上げていく。

 よく「若々しい。」と言いますね。心に張りがあり、いつまでも好奇心を失わないこと。これが双子座・水星の基本的な働きです。言うまでもなく双子座の人にとっては上手に育てていかねばならない要素。ですが、音楽の先生は音符さえ読めれば文字は読めなくてもよい、というわけにはいかないように、万人にとって大切な資質です。

 ところで水星は双子座の支配星であると同時に、乙女座の支配星でもあります。次回は乙女座の水星についてお話しましょう。またお会いしましょうね。