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第16話 グラストンベリー:魚座の海王星

 イギリス西南部のサマセットに数々の伝説織りなすグラストンベリーという人里離れた町があります。日本でもよくよくテレビ雑誌で紹介されていますので、私がわずか爪の垢ばかりの見識でお茶を濁すこともないかと思いますが、ふと書いてみたくなったので、あえて取り上げます。
 と言いますのも、私とクリスおじさん(夫)は先日、1週間ばかりグラストンベリーに滞在していましたもので。私達は年1回ペースで巡礼のようにこの地を訪れます。

グラストンベリー トール

グラストンベリー トール

グラストンベリー トール

グラストンベリー トール

 世界には聖地と名だたる所が数多くありますが、グラストンベリーもその一つ。鍼灸では、体のあちこちにある「ツボ」を押すと胃の具合がよくなったり疲れが取れたりすると言いますね。で、その「ツボ」を結ぶルートを「経絡」と言うようです。
 地球にも人体同様、経絡が走っていてその経絡を“レイライン”と呼ぶ。20世紀の初め、ワトキンス(Alfred Watkins)という人が、古代遺跡が何故か一直線上に建てられているのを発見して展開した見解。正統派の学者からは見向きもされないようですが、私は一理あるように思いますね。

グラストンベリー トール

グラストンベリー トール

 このグラストンベリーは英東部から西南へ伸びる聖マイケル・ラインともう1本、北から南へ伸びるレイラインのジャンクション。人間の体のツボ同様、俗に言う“パワースポット”として知られています。ここでは、人の思いやバイブレーションを増幅させる働きが生じる。特にこの力は夏至、冬至の時期に強まると言われます。ですから、ここにいる間は自分自身をクリアーな精神状態を保つように心しなくてはいけませんね。
 ちなみにクリスおじさんはダウジング・ロッド(水脈やレイラインの上に立つと反応すると言われる二股の枝、又は2本の金属棒。地下経絡探知機と言えばよいのでしょうか。)を購入して、あれこれと実験に余念がありません。

 このジャンクションである小高い丘、トール(TOR, 古代コーンウオールの言葉で“石の塔”の意)の上にそびえる聖マイケル教会。中ががらんどうの小さな建物ですが、異次元への扉が開くと言われる場所。

聖マイケルライン

聖マイケルライン

 思い込みか錯覚か、しかし確かにここに立つと占星学と瞑想を教えて頂いた故山田孝夫先生の声なき声がエンエンと聞こえてくる気がします。人生の霊的な課題ですとか今後の社会のあり方とかですね。まんざら嘘っぱちでもない、普段の自分の知恵では思い浮かばないことが浮かびます。 
 ここでおことわりしておきたいこと。私は決して山田先生の霊と交信していると言っているのではなく、思うに先生が確立された宇宙観と非常にチューニングしやすい場所だと、自分なりに納得している次第です。

トールの上、聖マイケル教会がらんどうの内部より空を見上げる。

トールの上、聖マイケル教会がらんどうの内部より空を見上げる。

 町の目抜き通り、ハイ・ストリートの近くには英国最古の宗教遺跡である僧院跡、”グラストンベリー・アビー“(Glastonbury Abbey)があり、敷地内にはアーサー王の墓がひっそりとたたずんでいます。簡素なものですね。畳1枚ばかりの面積に小さな墓標が立てられ名前が記されています。

グラストンベリー僧院跡にあるアーサー王の墓

グラストンベリー僧院跡にあるアーサー王の墓

グラストンベリー僧院跡にあるアーサー王の墓の墓標

グラストンベリー僧院跡にあるアーサー王の墓の墓標

 伝説か実在の人物か定かではないようですが、アーサー王は5世紀頃、サクソン人(北ドイツの大部族)との戦いに明け暮れていたイングランドに平和をもたらした偉大な王様。アーサー王物語の舞台となった「アヴァロンの島」(Isle of Avalon、アヴァロンはリンゴの意味でリンゴは不死の象徴) 戦いに敗れたアーサー王は「アヴァロンの島」で永遠の眠りにつきますが、このアヴァロンの島はグラストンベリー一帯をさすのでは、という説もあるようです。そしてイングランドが窮地に陥った時は、アーサー王と彼の助言者、魔術師のマーリンが再来して、イングランドを危機から救うという言い伝えが息づいています。

「アーサー王のアヴァロン最後の眠り」エドワード・バーン・ジョーンズ画

「アーサー王のアヴァロン最後の眠り」エドワード・バーン・ジョーンズ画

 クリスタルやタロット・カードの店が身白押しのハイ・ストリートを上りつめて右へ曲がり10分ばかりで“聖杯の泉”(The Challis Well Garden)に到着。キリストが最後の晩餐に使った聖杯が投げ込まれたという伝説の井戸があります。

聖杯の泉

聖杯の泉

 鉄鉱泉で赤味を帯びた水がキリストの血にたとえられ、手垢のついた言葉で恐縮ですが、“ヒーリング・スポット”として世界中から旅人を引きつけます。

聖杯の泉

聖杯の泉の庭

 さて、このグラストンベリー。どの星座のテーマを物語るにふさわしいか、頭の中を黄道12宮がぐるぐる巡りますが、やっぱり魚座を選びます。
 ハイ・ストリートのスピリチュアル・グッズ店がすっかり商業化されている印象はぬぐえませんが、それでも世俗で得られない、人生の霊的な意義を求めて人はここに集まってくるように思うからです。立身出世をした、家を買った、高学歴の子供を育て上げた。人生の値打ちはそんなところにはないと感じている人が、この地に魅せられて集まってくるように見受けます。

 魚座は黄道12宮最後の星座。牡羊座に始まり魚座でこの世の旅を終えようとする魂が神の家に還っていく一歩手前ですね。社会で築き上げた学歴、地位、名誉、財産はもはや用をなしません。ここで問われるのは、今生で霊的つまり深い精神的な学びがあったかどうかということだけ。また仮にこの世を去るドタン場になって、自分の恨みつらみに気づいても、ただただそのことを静かに受け入れ、人を自分を許す。なかなか凡人が至るにほど遠い境地ですが、そういう領域であると私は想像します。

 キリストにまつわる聖杯の泉も魚座を思い起こす理由の一つ。西洋占星学では春分点を起点に360度の空間を、反時計回りで12等分。牡羊座から魚座までの12星座、つまり12の異なる色合いを持つ空間と定めるわけです。
 ところがこの春分点、常に一定の位置にあるわけではなく、地球の歳差運動のため少しずつ移動します。約2万6千年かけて360度回転して元の位置に戻るそうですね。およそ2千年余りで一星座(30度)移動することになります。2千年前、牡羊座の0度にあった春分点が、現在は魚座の0度付近。春分点は12星座とは逆に時計回りに移動しますので、牡羊座の0度から2度3度とは進まず、魚座の29度28度と逆行していくわけです。そして魚座の0度から水瓶座の29度に突入して、以後2千年余りかけて水瓶座の空間を移動することになります。
 「水瓶座時代の幕開け」という言葉、耳にしますね。これは占星学というレンズを通して世界を見る時の2千年単位での時代精神を表したもの。魚座のシンボルは2匹の魚で、魚はキリストの霊性の象徴とも言われます。このように考えると過去2千年間は、「救世主キリスト」に代表される魚座精神を反映した時代と言えるでしょう。

地球の歳差運動の図

地球の歳差運動の図

 「救い」も魚座のテーマですね。よく「救いがない。」とか「救いを求める。」なんて言いますけど、この場合の「救い」は会社で昇進したとかビジネスが大当たりしたとか、そういう意味では使わないんですね。何か大きな愛情や聖なるものに触れて、歪んだ心が慰められた。そういう時に人は「救われた。」と言うものです。

 それから「救い」と並んで「祈り」も魚座のテーマと私は考えます。これも「試験に合格しますように。」「年金がもらえますように。」と言った個人の欲得不安まみれのものではなく、もっと洗練されたものですね。どんな逆境にあっても宇宙に働く「神なるものの意思」に身をゆだねるといった謙虚で献身的なものです。

 黄道12宮最後の星座、魚座は人類の集合的な遺産が収められた図書館、博物館。過去の遺産には忌まわしい略奪や戦争といった葬られた記憶もありますが、人類が引き継ぐ知恵、宝もある。魚座はこういった過去の遺産にアクセスしやすい領域と考えます。

 救いを求め、祈りを捧げに多くの人がグラストンベリーにやってくる。トールの丘の上で思い思いにマントラを唱えたり楽器を奏でたり。世俗での暮らしから一歩下がって内なる神との対話に来るのでしょう。

グラストンベリー トール

グラストンベリー トール

グラストンベリー僧院跡

グラストンベリー僧院跡

 ところで私達夫婦が暮らす英南岸のリゾート、ブライトンの喧騒にいささか食傷気味のクリスおじさんは、毎年グラストンベリーを訪れる度に目抜き通りの不動産屋を熱心に物色して引っ越すべきか否か首をかしげていますが、いまだ結論は出ていません。
引っ越した暁には遊びにいらしてください。

 またお会いしましょうね。