心理占星学入門 序文 心理占星学とは。
いきなり「心理占星学、サイコロジカル・アストロロジーとは何か?」という永遠に明確な答えの出ない質問から入ります。
アストロノミー(ASTRONOMY)の日本語訳は「天文学」。対して、アストロロジー(ASTROLOGY)の方は「星占い」と捉えられるのがもっぱらです。
アストロノミ―は天体の動きなどを観測する学問。アストロロジーは人間同様、宇宙に生きとし生ける有機的な天体の性質を洞察する学問。精神が物質から切り離された現代では、こういった宇宙観は受け入れられにくいかもしれなせん。が、私自身はアストロノミ―を学問としてとらえるのと同様、アストロロジーも学問として受け止めます。
そのように考えると当然、天文学に対する占星学という概念を持つことができますね。
ところが「アストロロジー、イコール星占い」というイメージが定着して、「星占いって占いの一種?」「占いって当たるの?」といった具合に流されがちです。ちなみにフォーチュン・テリング(FORTUNE TELLING)の日本語訳が「占い」となります。
「占い」という言葉で思い浮かぶのは「いつ頃、結婚できますか?」「この人と結婚して
幸せになれますか?」「来年は良い就職口が見つかりますか?」「私はこの仕事に向きますか?」といった質問の数々。そしてそれに対してイエスノーの明確な答えを期待する人が多いようですが、これでは何をするにもあなた任せ。未来を恐れて生きる消極的な人生になってしまします。
人は白と出るか黒と出るかわからないことを、あえて実行に移して、多くの挫折感と満足感を味わって、その中から知恵と人生への洞察を深めていくものだと私は考えます。
「占星術」「占星学」「星占い」様々な訳語が使われていますが、アストロロジーとはホロスコープ(HOROSCOPE)という、人が生れた瞬間の天体の配置図を「魂のガイド・マップ」として、人生の潜在的な可能性と課題を探っていく学問です。
ですから、アストロジーとフォーチュン・テリングは似て非なるもの。
で、このホロスコープの解釈のスタイルですね。かなり宿命論的な読み方をする人と、人間の自由意思と創造力に主眼を置いて読む人がいます。
このあたりは「国によって、流派によって、解釈が違いますか?」と聞かれたら、私は「はい。」と答えることはできません。「何々流」「何々式」といったマニュアルはないのです。「それでは全部いっしょですか?」と聞かれたら、これも「はい。」と答えることができませんね。
しかし矛盾するようですが、民族によるお国柄、メンタリテイーの違いは、やはりアストロロジーの世界にも反映されるように感じます。
そしてアストロロジーの見解ですが、従来の「伝統占星学」と言われるマニュアルに沿って、二論的な解釈をする方法。
それに対して「心理占星学」と言われる1970年代以降に生まれた潮流があります。これは心理学者のユングが患者の診断にホロスコープを使ったことから、ユング心理学の考えに基づいてホロスコープを読んでいこうという一つの取り組みです。起こっている出来事の背後の意味を探る。こうなると「良い悪い。」の二元論では話が片付かなくなります。
一つ、結婚を例に挙げましょう。世間では結婚は良いことで幸せなことで、おめでた尽くしですが、実際は人によって結婚の意味が変わってきます。中には結婚が挫折の表れという人もいるわけです。「私は上京してファッション・デザイナー目指して頑張った。だけど、生き馬の目を抜くような競争社会に疲れて故郷に戻ってきた。将来何のあてもなく、ちょうど親戚のおじさんがお見合いを勧めてくれて別段悪い人ではなかったので、あきらめて結婚した。」といった例です。
それから親孝行のための結婚という人もいます。「年とった両親が私の先行きをいつも心配するので、親を安心させるために商社マンと結婚した。」といった具合です。
でも皆一様に挙式の日には「良いご縁があって、このような幸せに恵まれました。」めでたし、めでたし、と拍手喝采するわけです。意地悪で言っているわけではありません。
で、何年か何十年か後に人生の分岐点に立たされた時に、人はふと「あの時の結婚は一体何だったのだろう。」と、自分に問いかけたくなります。
このような時に心理占星学は大きな力を貸してくれると私は考えます。もつれた糸を解きほぐして、自分本来の道標を探るヒントを与えてくれるのです。今後の進む道に関して決断を下すのはあくまで自分自身です。
そして、変えられない過去の出来事でも、視点を変えると万華鏡のように色合いが変わります。過去に光を当てること、つまり大人になった今の自分の視点で「理解と意味づけ」をすることで、未来の創造力が生れるのです。
ホロスコープはあくまで潜在的な可能性と、人生での内的な課題が示されたマップです。学校のカリキュラムと考えてもよいかもしれません。入学すると1年間の課題とカリキュラムが配られますね。但し、それに対して取り組むか取り組まないかは自分次第です。
そして人生の取り組みについてですね。ホロスコープには「どの職業に就けば良い。」とは書かれていない、というのが私の見解です。
但し「勇気と果断な決断力をもって、前例のないことにチャレンジして、独立独歩の人生を歩みたい。」または「人との感情的な絆を大切にして、愛し愛され守り守られたい。ささやかな巣作りをしたい。」あるいは「広い世界に出たい。そして遠くの世界で起こっていることを体験して視野を広げたい。その中から人生の目には見えない宝を見つけたい。」といった、おおもとの願いが記されています。
こういったことが、本には拡大解釈して書かれているわけです。「あなたはスポーツマンに向きます。起業家でも良い。いずれにしても人に雇われるのは向きません。」「あなたの適職は保母さんです。」「あなたは旅行業に向くでしょう。外国語の先生もいいです。」といった具合に。
しかし、このおおもとの願い、エッセンスが実現できる方法、つまりライフ・スタイルやライフ・ワークは人から指図されるのではなく、年月がかかっても自分でつかんだ方が良いですね。
で、このおおもとの願いに辿り着くのがまず大きな課題です。自分ではわかっているつもりでも、たかだか寿命80年の限られた人生での願いの大半は、実は家風や世相に色づけられたものであることが悲しいかな、事実。様々な分岐点に立たされた時や、何をしたいのかわからなくなった時が、自分の意思で人生を歩み始める良い機会と、私は考えます。
そしてそういう時に、生まれた時の天体の配置図、ホロスコープが「魂のガイド・マップ」として、知恵を内側から引き出す手助けをしてくれるのです。
それでは次回から順を追って、歴史、星座、惑星、惑星同士の位置関係などホロスコープに記された、象徴的な言語を読み解いていきましょう。