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番外編 イギリス国民投票 その2

 6月23日の国民投票以来、英国内は活断層で分断されたように、その亀裂が不協和音協奏曲を奏でます。
 今日はまず活断層の右と左を、稚拙ながら私なりに整理してみたいと思います。どんなシステムにも利点不利点の両面があり、その恩恵を受ける人、しわ寄せを食う人の両方が出てくるのが世の常。

国際都市ロンドンの光景

 まず、残留を望む人=EUの恩恵を受ける人達。
 新聞を見ますと“コスモポリタン・エリート”なんていう表現が目につきます。要するにロンドンや英南岸の裕福な地域で暮らして、高額の年収を得て、フランスもドイツもフリーパスで行き来ができる、絵に描いたような国際社会をエンジョイしている人達。そして言うまでもなく、すでに市民権(選挙権含む)を取得してロンドンに定住している多くの移民、及びその二世。
 それから前回もお話しましたように、関税がかからない単一市場のおかげで自社商品をEU諸国に輸出して、その恩恵に預かる企業家。

EU漁業協定に対する抗議キャンペーン
(2013年TVドキュメンタリー番組より)

一方、離脱を望む人=EUシステムの弊害を被っている人達。
押し寄せる移民に押されて職を失い、両親そして親戚ほぼ全員生活保護、といった英中北部の貧しい地域の人達。
それからこれは3年前に見たテレビのドキュメンタリー番組。イギリスは海に囲まれた島国ですが、EU漁業協定で魚の収穫量が決められている。年間にサケはこれだけ、タラはあれだけ、といった具合です。ところが実際に網を投げると、魚は規定量に応じて、かかってはくれない。タラを捕ろうと思っても、規定量を超えた別種の魚がかかってくる。
すると死んだ魚の大半を海に投げ捨てなくてはいけない、なんとも理不尽な現実が。自国の判断で漁業が営めないジレンマです。農業も然りと聞きます。

アフリカからボートでスペイン南岸に向けて出発する難民。
  スペイン、フランスを北上。
仏北岸カレイ(Calais)からドーバー海峡トンネルを抜けて、最終目的地はイギリス。
中東難民は別ルートで、やはりカレイを経由してイギリスに向かいます。

 付けて加えて急増するEU圏外からの移民難民の数。中東アフリカからの難民がまずはヨーロッパ大陸に辿り着き、フランスを北上して、フランス北岸から貨物トラックの後ろの荷台に飛び乗ってでも歩いてでも何としてでも、ドーバー海峡トンネルを抜けて英南岸にやってくる。なんでも目指す目的地はイギリスだそうです。何故か?自国民ならず外国人に対しても、イギリスが一番、社会保障が手厚いから。

仏北岸カレイの難民キャンプ。
出入国管理の目をくぐり、イギリス入国チャンスをうかがう人達。

 一例ですが、私などは50も過ぎて渡英。それまで英国民健康保険など治めたこともありませんが、たとえガンになっても白血病になっても医療費は全て無料です。
 行き届いた社会保障ゆえに、不法でも何でも「イギリスにさえ行けば、なんとかなる!」という希望の光を命綱に、危険を冒してイギリスにやってくる難民が後を絶たないそうです。

仏北岸カレイ。出入国管理の目をかいくぐり、
ドーバー海峡トンネルに向かって柵を乗り越える若者達。

イギリス海峡の地図。右端の狭い海域が、”ドーバー海峡”。
仏北岸カレイ(Calais)と、英南岸ドーバー(Dover)の距離はわずか30キロ余り。

 こういったところが見識浅い私が見受ける現状ですが、イギリスは1975年にも離脱を問う国民投票をしているのですね。この時は残留の結果が出たそうです。
(当時は、欧州経済連合体、EEC, European Economic Communityという名称。関税がかからない単一市場を共有する連合体。)

ホロスコープ
1975年の国民投票終了時
1975年 6月5日 午後10時 Westminster, England

 占星学に携わっていらっしゃらない方が多いことを承知の上で、またまたあえて1975年国民投票のホロスコープ(その瞬間の、地球から見た天体の配置図)を挙げます。
 ここで前回の国民投票のちょうど41年後であることから、天王星に注目。
天王星はギリシア神話の「天空の神ウラヌス」。「自由平等、博愛人道、革命」を象徴すると言われます。
 この天王星の公転周期は84年。つまり黄道12星座を1周するのに84年かかるわけです。興味深いことに、今回の国民投票は、前回から見て、天王星が半周する時期にほぼ等しく、占星学では、この時期を「天王星のハーフ・リターン」と言います。

ギリシア神話の天空の神 ウラヌス

 個人の一生で、「天王星のハーフ・リターン」にあたる40過ぎは、人生の大きな分岐点。30代、自分の人生に満足していた人も、不満がありながらも「こんなもの。」とあきらめていた人も、40の声を聞いたとたん、「これで終わってなるものか!」と一念発起して、脱サラで居酒屋を開く男性。離婚して一人暮らしを始める女性。こういった話は時折、耳にします。つまり人生仕切り直しの大事なポイントになるわけです。

 話を国民投票のホロスコープに戻します。個人の人生同様、イギリスのEUに対する向き合い方も折り返し地点に来ているのでは、というのが私の印象。41年前に決断したことの見直し時期と言いますか。1975年当時はイギリスも含め9か国だった共同体(ベルギー、ルクセンブルグ、フランス、イタリア、オランダ、ドイツ、デンマーク、イギリス、アイルランド)は、いまや28か国(イギリス離脱前)に膨れ上がり、大きくなって袖が通らない上着のようになっているのでは?と私ですら首をかしげる始末。

 ですから前述の地域や職業による活断層の右左に加えて、1975年国民投票結果の、こだまが響いているように思うのです。
ちなみに離脱に一票投じたのは高齢層が多いと新聞にありますが、ここで軌道修正を、という強い思いがあるのでは、と私は想像します。

 ところが。今の40代以下は、1975年国民投票の体験がないわけですから、「いきなりナンデ?!」と平手打ちを食らったようなショック。

 ここで海王星の話に入ります。海王星はギリシア神話の「海の神ポセイドン」。「神のビジョン、夢、理想や幻想」を司ると言われます。黄道12星座を1周する公転周期は約165年。1星座には約14年間、留まります。そして海王星のある星座は「その世代が神のビジョンと崇めるもの」と言われます。

ギリシア神話の海の神 ポセイドン

 海王星が射手座にいた1970年から1984年生まれの世代。射手座は「外国、旅行、学問、哲学」の星座と言われます。よって、海王星射手座世代が神と崇めるビジョンは「国際化社会」。ですからこの世代の過半数が残留を希望するのは、天体の動きを見ると無理からぬこと。日本で言えば、外交官や大学教授でも何でもない、フツ―の庶民の子供が「海外ホームステイ、語学留学」と謳って外国に出て行った、最初の世代です。

 続く海王星の山羊座世代。1984年から1998年に生まれた人達。山羊座のテーマは「アイデアを組み立てて実際に機能させる構築力と、目標意識」。
海の神ポセイドンにとって、山羊座が居心地の良い住処とは、とても思えませんが、あえて言うなら、この世代の神のビジョンは「高い志と目標」。
 ところが1989年「トリプル・コンジャンクション」と言われる、山羊座での土星と天王星と海王星の会合時に起こった、ベルリンの壁崩壊とソ連崩壊。続くバブルの崩壊。東対西の構造が大きく変わった時です。この崩壊が、記憶以前の記憶として無意識に刻まれているので、「イギリスが離脱してEUが分断したら、私の将来の仕事はどうなるの?!」というダブルショック。

 こういった次第で、世代によって見解が異なることもありうるか、と考えますが、「天王星のハーフ・リターン」に注目すると、やはり今回の離脱は、避けては通れないプロセスのように思えるのです。

 個人の人生でも40過ぎの転職、起業、突然の離婚や結婚は、渡りに船とは行かないのが常です。その上、周りからは「無謀だ。計画性がない。」とボロクソに言われて、経済困窮して意気消沈。「会社、辞めなきゃよかった。」「離婚しなければよかった。」などと後悔の念が先に立つことしきり。「離婚を止めてくれなかったお姉ちゃんが悪い!」と、誰かのせいにしたくなったり。

 だけどそれでいいのです。現実は夢に描いたバラ色の未来とは大きく違ったけど、少なくとも自分を縛っていた鎖からは解き放たれたのですから。自由の為に、そして納得の行く人生行路のために支払う代償は大きいけど、ふり出しに戻って一から根気よく進めば、20年後の人生はなんとかなっているはずです。そして「あれでよかった。」と思う日が必ず来ます、というのが私の持論。

ホロスコープ 
内円は2016年の国民投票終了時 
2016年 6月23日 午後10時 Westminster, England
外円は1975年国民投票終了時
1975年6月5日 午後10時 Westminster, England

 前置きが長くなりましたが、私は個人だけでなく、国家にも同じプロセスが起こるように思うのです。英国内は混乱を極めますが、長期的視野で観ると、そして1975年の国民投票を思うと、やはり避けては通れない関所だったと思います。

 関税、国境、難民、経済格差に地球温暖化。世界は様々な問題を抱え大きな曲がり角に来ています。身の丈に合わなくなった上着が着れないように、「このまま」を維持していくことは不可能。

 人間の習性には、現状がたとえ不健全であっても「変わりたくない!放したくない!」という惰性とも言える恐れがありますが、大事なのは変化を恐れないこと。より良い未来の青写真は誰にも見えてこないのですが、手離す勇気が原動力になると私は考えます。

※注 ホロスコープを除き、画像は全てウイキペデイアから引用させて頂きました。

※なお、この原稿は竹澤まりさん主宰のウエブ・マガジン“えにし”にも転載しております。ぜひ“えにし”もご覧下さい。
http://www.yenishi.com