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番外編 イギリス国民投票

 6月23日、EU離脱を問う国民投票が行われました。夜10時から翌朝6時まで、テレビは開票速報。イギリスの長い、長い眠れない夜が明けて、結果は離脱。2016年6月23日は、21世紀の世界史に残る大きな分岐点になったという印象です。

 読者の中には占星学に携わっていらっしゃらない方も多くいらっしゃると思いますが、今回はあえてイギリス国民投票終了時のホロスコープを挙げます。
アセセンダントと言われる東の地平線上に、「死と再生」を司る冥王星、ギリシア神話の冥界の神ハデスが来ています。つまりハデスに大きく色づけられた宇宙の空模様。

国民投票のホロスコープ 2016年6月23日 PM10:00 Westminster, England

国民投票のホロスコープ
2016年6月23日 PM10:00 Westminster, England

 ところで冥界とは地獄にあらず。地下の奥底、深層意識の奥底を表すと考えてよいでしょう。この冥王星、様々な意味が込められますが、ゼロから出直す勇気、暗闇を恐れず、手探りで掘り進むことで遭遇する地底の宝物。SF映画で地底に埋まっている金銀ダイアモンドは、魂の宝物の象徴と私は考えます。厄介な現実にふたをせず、きれいごとにせず、ゼロから出直す勇気によって培われる人生の底力、と考えます。
それからもう一つ。個人的にも世界的にも起こりうる「脱皮、死と再生のプロセス」ですが、この移行期、これまでの所有物を全てゴッソリ抱えては渡れないものです。手離すことが問われます。

 こういったこと諸々考えますと、今回のEU離脱はハデスの願いに叶う結果に思えます。行き先がみえなくても、です。
国民投票前の公開討論会で、冥王星ハデスを思わせるような、政治家のコメントがいくつかあったことも印象的。
例えばですね。残留を支持する政治家のスピーチです。「離脱なんかしたら、素手で暗闇に飛び込むことになるのよ!リスクを避けなさい。」ふーん、ハデスはリスクを避けることを嫌います。そして手ぶらで暗闇に飛び込むように要求してきます。

 それから。「離脱支持の意見を聞いてると、子供の頃に読んだ“オズの魔法使い”を思い出すわ。皆でオズの魔法使いに会いに行こうと、勇んで行って、カーテンを開けたら向こう側には何もなかったじゃない!」そうなのです。ハデスは小判ザクザク投げてくれる神様ではない。地下の空洞のような所に住まう神様。だからカーテンの向こうに何もないのが当たり前。しかし恨まず怒らず、手探りで進むことで自分の内側から自信と勇気が湧いて、鉛が金に変わるような魂の強さと豊かさを与えてくれます。

 まだあります。チーズ工場の経営者へのインタビュー。「EUという単一市場があるので、我が社のチーズは関税がかからず手ごろな値段で買ってもらえる。残留を望みます。」
「もし離脱したら?」というインタビュアーの問いかけに。首をかしげながら「うーん、暗がりを一歩一歩手探りで進んでいくしかないですねえ。」これも冥王星ハデスを象徴する一言でした。

 私自身、今回の離脱は、もはや機能しなくなって行き詰っているEUに風穴を開ける、突破口を開く、しかるべき引き金になったと考えます。EU加盟国が増え続け、イギリスには毎年30万人の移民が押し寄せ、4分毎に1軒、家を建てなくてはいけない実態。
大きくなりすぎて、もはや持ちこたえられないシステムを一度リセットする。その先の明確なプランは誰にもわからないのですが、どこかで誰かがリセットする勇気を持たないと、死と再生のプロセスには至らないわけです。

 冥王星の公転周期は約245年。つまり245年かけて黄道12星座を1周することになります。牡羊座で始まった旅は、山羊座で頂点を極め、次のサイクルに明け渡すべく現存のシステムが崩壊に向かう。現在、冥王星は山羊座にあります。
1822年、冥王星が牡羊座に入って始まった旅って何?と、私なりに考えますと、欧米諸国で始まった産業革命。それに伴い成長した資本主義。銀行から資金を借りて、国外に工場を持ち製品を売る、という図式ですね。

 この資本主義の落とし穴。ド素人の私が考えても、毎年売り上げを伸ばさないといけないシステムが、どこまで続くかしらん?と首をかしげてしまうのです。ですから離脱の背後にあるのは、資本主義が幕を閉じようとする時代に入ったということでは、と私は受け止めます。
離脱の結果発表で「(今回の国民投票は)まっとうな小市民が、大企業に勝った。」(“This is the victory of decent people against big business.”)という、イギリス独立党ファラージュ党首の言葉。その通りだと思います。
ただ、EU諸国に恋人がいる、または留学を目指している若い世代もたくさんいるわけですからその人たちが手離すものを思うと心が痛みます。

 次に天王星の動きに目を向けます。天王星はギリシア神話の天界の神ウラノス。自由自在に天空を駆け回り、地上の決め事とは無縁の存在。誰も見たことのない新たなビジョンを人間にもたらす神様です。公転周期は84年。

 現在、天王星は12星座最初の牡羊座に。1927年、ニューヨーク株式市場の暴落直前に牡羊座に入り、2010年に黄道上を1周し終えた天王星は、2010年の春に新たなサイクルに入りました。と書くと、幸先よく勢いよく聞こえるかもしれませんが私自身、牡羊座の天王星は、新たなレールが敷かれていない無法地帯のジャングル探検状態、と考えます。天空の稲妻のようなビジョンはあるものの、どのように地上に降ろして根付かせたものか見当もつかない、といったところでしょうか。

 こういった天体の動きを考えますと今後、株や為替の急変動、大企業の倒産、世界恐慌、様々な混乱が起こるだろうなあ、なんて薄ぼんやりと考えてしまいます。
こういう時に、衝動と焦りと目先の欲得にかられて行動すると、とんでもないことになります。集合的にも個人的にも。

 もう一つ、山羊座の冥王星ハデスに言えること。絶対的な権威に、永遠はない。まさかと思う巨塔も崩れる時は崩れます。だから「寄らば大樹の影」といった生き方は通用しない宇宙の気象情報。言い換えればこれまで自分を縛っていた権威の手かせ足かせをはずす時、と考えてもいいでしょう。
そしてハデスの呼びかけで始まった旅に「元のさやにおさまる」や「のど元過ぎれば熱さを忘れる。」はありません。計画表もなく保証もないけれど、天の配剤と自分の底力を信じて、パワー志向に走らず、人を責めず、おじけずに正直に進み続けることです。

 イギリスのEU離脱。一見、チームワークの崩壊と目に映っても、長期的視野で眺めると新たな世界秩序を見出す糸口となることを願います。
そして個人の人生で閉塞感に捉われている人にとっても、何かの突破口が開けることを祈ります。

国民投票のホロスコープ 2016年6月23日 PM10:00 Westminster, England

江戸幕末の浮世絵師、歌川国芳の作品、
武家社会の終末を象徴するかのような骸骨の姿。
21世紀現在の社会風景をほうふつとさせるものがあります。

参考文献 
「世界史物語」 西村貞二著 講談社
“Planetary cycles” Astrid Fallon Fallon Astro Graphics

※注 画像は(ホロスコープを除き)ウイキぺデイアから引用させて頂きました。

※尚、この原稿は、竹澤まりさん主宰のウエブ・マガジン"えにし“にも転載しています。
 ぜひ“えにし”もご覧ください。
 http://www.yenishi.com